はじめに:史上最大規模の国際協調からの撤退
2026年1月7日、ドナルド・トランプ大統領は大統領令14199に基づき、「米国の利益にならない」と判断した66の国際機関・条約・枠組みからの脱退および資金拠出停止を命じました[1]。
このリストには国連関連機関31件、非国連系組織35件が含まれ、気候変動、人権、開発援助、ジェンダー平等など広範な分野に及びます[2]。マルコ・ルビオ国務長官は「これらの機関は冗長、誤管理、不要、有害であるか、米国の利益に反する利害によって運営されている」と述べています[3]。
本記事では、AP通信が公開した正式リスト[1]をもとに、66機関すべての名称・役割・脱退による影響・日本の加盟状況を一覧化しました。
非国連系組織35件の完全リスト
以下、トランプ政権が脱退を命じた非国連系の国際機関・枠組み35件です。各機関の役割、脱退による想定影響、日本の加盟状況を記載しています[1][4]。
| No. | 機関名(英語) | 機関名(日本語) | 日本 加盟 |
役割・概要 | 脱退による影響 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 24/7 Carbon-Free Energy Compact[1] | 24時間365日炭素フリーエネルギー協定 | ○ | 2030年までに電力網の脱炭素化を目指す国際イニシアティブ。主要国・企業が参加。 | 米国の電力部門での脱炭素目標設定が後退し、クリーンエネルギー投資の国際協調が弱まる。 |
| 2 | Colombo Plan Council[1] | コロンボ・プラン評議会 | ○ | アジア太平洋地域の経済・社会開発を支援する1951年設立の枠組み。技術協力・人材育成が中心。 | 南アジア・東南アジアでの教育・技能訓練プログラムへの米国の関与が減少。中国の影響力拡大余地。 |
| 3 | Commission for Environmental Cooperation[1] | 環境協力委員会(CEC) | × | NAFTA/USMCA加盟国(米・加・墨)の環境協力機関。越境汚染や生物多様性保全を扱う。 | 北米の環境政策協調が弱体化し、国境を越える大気・水質汚染対策に空白。カナダ・メキシコとの信頼関係にも影響。 |
| 4 | Education Cannot Wait[1] | 教育は待てない(ECW基金) | ○ | 紛争・災害地域の子どもへの緊急教育支援を行う国連系基金。ユニセフ等と連携。 | シリア、アフガニスタン、ウクライナ等の紛争地での教育継続支援が資金不足に。子ども世代の教育機会喪失リスク拡大。 |
| 5 | European Centre of Excellence for Countering Hybrid Threats[1] | 欧州ハイブリッド脅威対策センター | × | EU・NATO加盟国が設立したサイバー攻撃・情報戦対策の専門機関(本部フィンランド)。 | 対ロシア・中国の情報戦・サイバー防衛での米欧協力が後退。情報共有ネットワークから米国が外れる。 |
| 6 | Forum of European National Highway Research Laboratories[1] | 欧州国立道路研究所フォーラム | × | 欧州各国の道路インフラ研究機関の連携フォーラム。安全基準・技術開発の情報交換。 | 米国のインフラ技術標準が欧州と乖離し、自動運転・道路安全技術の国際調和が遅れる可能性。 |
| 7 | Freedom Online Coalition[1] | 自由なオンライン連合(FOC) | ○ | インターネットの自由・表現の自由を守る民主主義国家の連合。権威主義国家の検閲に対抗。 | 米国が「インターネット自由」のリーダーシップを失い、中国・ロシアのネット検閲・監視モデルへの対抗力が低下。 |
| 8 | Global Community Engagement and Resilience Fund[1] | グローバル・コミュニティ・エンゲージメント・レジリエンス基金(GCERF) | ○ | 過激主義対策・テロ予防のため、地域コミュニティを支援する国際基金。 | アフリカ・中東・南アジアでの草の根レベルの過激化予防プログラムが縮小し、テロリスト勧誘リスクが増大。 |
| 9 | Global Counterterrorism Forum[1] | グローバル対テロ・フォーラム(GCTF) | ○ | 29カ国+EUが参加する対テロ政策協調の枠組み。ベストプラクティスや政策提言を共有。 | 米国主導の対テロ政策協調メカニズムが弱まり、情報共有・法執行協力にギャップ。同盟国との連携も低下。 |
| 10 | Global Forum on Cyber Expertise[1] | グローバル・サイバー専門フォーラム(GFCE) | ○ | サイバーセキュリティ能力構築のための国際プラットフォーム。途上国支援が中心。 | 途上国のサイバー防衛能力向上プログラムへの米国関与が消失。中国・ロシアの技術支援が拡大する余地。 |
| 11 | Global Forum on Migration and Development[1] | グローバル移住・開発フォーラム(GFMD) | ○ | 移民政策と開発政策を統合的に議論する政府間対話の場。UNとは独立。 | 移民受け入れ・送り出し国間の政策調整が米国不在で進み、米国の移民政策が孤立化する懸念。 |
| 12 | Inter-American Institute for Global Change Research[1] | 米州地球変動研究機構 | ○ | 南北アメリカ大陸の気候変動・環境研究ネットワーク。科学者交流・データ共有を推進。 | 米国の気候科学者が地域研究ネットワークから離脱し、気候予測・政策立案の科学基盤が弱体化。 |
| 13 | Intergovernmental Forum on Mining, Minerals, Metals and Sustainable Development[1] | 鉱業・金属・持続可能開発に関する政府間フォーラム(IGF) | ○ | 鉱物資源ガバナンス改善を目指す70カ国超の枠組み。透明性・環境配慮を推進。 | レアメタル・戦略鉱物の国際ルール形成で米国の発言力低下。中国主導のサプライチェーン構築が加速する可能性。 |
| 14 | Intergovernmental Panel on Climate Change[1] | 気候変動に関する政府間パネル(IPCC) | ○ | 気候科学の評価報告書を作成する国際機関。世界の気候政策の科学的根拠を提供。 | 米国の気候科学者がIPCC報告書執筆から外れ、報告書の信頼性・影響力が低下する懸念。気候政策の科学的基盤が弱体化。 |
| 15 | Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services[1] | 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES) | ○ | 生物多様性版IPCCとも呼ばれる。生態系保全の科学的評価を提供。 | 米国の生態学者・政策担当者が国際評価プロセスから抜け、生物多様性条約(CBD)等での米国の影響力がさらに低下。 |
| 16 | International Centre for the Study of the Preservation and Restoration of Cultural Property[1] | 国際文化財保存修復研究センター(ICCROM) | ○ | 文化遺産保護の技術支援・人材育成を行う政府間機関(本部ローマ)。UNESCO連携。 | 戦災文化財復旧(シリア、ウクライナなど)や災害対策での米国専門家の関与が消失。文化外交ツールも喪失。 |
| 17 | International Cotton Advisory Committee[1] | 国際綿花諮問委員会(ICAC) | ○ | 綿花の生産・貿易・消費に関する情報交換と政策協調を行う機関。 | 世界綿花市場の情報収集・分析で米国の発言力が低下。途上国綿花生産者支援での影響力も減少。 |
| 18 | International Development Law Organization[1] | 国際開発法機構(IDLO) | ○ | 途上国の法の支配強化、司法制度改革を支援する政府間機関。 | 途上国での法制度整備・汚職対策・人権保護プログラムへの米国関与が消失。中国の「一帯一路」型開発が相対的に拡大。 |
| 19 | International Energy Forum[1] | 国際エネルギーフォーラム(IEF) | ○ | エネルギー生産国・消費国の対話プラットフォーム。OPEC・IEA等も参加。 | エネルギー安全保障と価格安定化を巡る国際対話で米国の調整役が消失。産油国と消費国の対立激化リスク。 |
| 20 | International Federation of Arts Councils and Culture Agencies[1] | 国際芸術評議会・文化機関連盟(IFACCA) | △ | 各国の文化政策機関が参加するネットワーク。芸術支援のベストプラクティス共有。 | 米国の文化外交・ソフトパワーが低下。文化政策での国際協調が弱まる。 |
| 21 | International Institute for Democracy and Electoral Assistance[1] | 国際民主主義・選挙支援研究所(IDEA) | × | 民主主義の強化、選挙制度改革を支援する政府間機関。 | 途上国での選挙監視・民主化支援における米国の影響力が後退。権威主義体制への対抗力低下。 |
| 22 | International Institute for Justice and the Rule of Law[1] | 国際正義・法の支配研究所(IIJ) | ○ | 対テロ法執行、刑事司法分野での国際協力を推進。 | テロ対策・国際刑事協力での米国の技術支援が停止し、途上国の法執行能力向上が遅れる。 |
| 23 | International Lead and Zinc Study Group[1] | 国際鉛・亜鉛研究会(ILZSG) | ○ | 鉛・亜鉛の生産・消費に関する統計・分析を提供する政府間機関。 | 戦略金属の需給分析で米国の情報収集能力が低下。資源安全保障への影響も。 |
| 24 | International Renewable Energy Agency[1] | 国際再生可能エネルギー機関(IRENA) | ○ | 再生可能エネルギー普及を推進する政府間機関。160カ国以上が加盟。日本は第2位の分担金拠出国。[5] | 再エネ技術の国際標準化や途上国支援で米国の影響力が低下。中国・EUが主導権を拡大する可能性。 |
| 25 | International Solar Alliance[1] | 国際太陽光連合(ISA) | × | インド主導で設立された太陽光発電推進の国際枠組み。途上国支援が中心。 | インド・フランスなど他国が主導権を握り、米国企業の途上国太陽光市場参入機会が減少。 |
| 26 | International Tropical Timber Organization[1] | 国際熱帯木材機関(ITTO) | ○ | 熱帯林の持続可能な管理と木材貿易の促進を目的とする政府間機関。 | 違法伐採対策や森林保全プログラムでの米国の関与が消失。アマゾン・東南アジア等の森林破壊加速リスク。 |
| 27 | International Union for Conservation of Nature[1] | 国際自然保護連合(IUCN) | ○ | 世界最大の自然保護ネットワーク。絶滅危惧種リスト(レッドリスト)を作成。日本は1995年に国家会員として加盟。[6] | レッドリスト更新や自然保護政策への米国の関与が減少。生物多様性条約での米国不在がさらに強まる。 |
| 28 | Pan American Institute of Geography and History[1] | 汎米地理歴史研究所(PAIGH) | × | 米州機構(OAS)傘下の地理・歴史・地図作成に関する専門機関。 | 中南米地域での地理情報・歴史研究協力から米国が撤退。地域協力の枠組みが弱体化。 |
| 29 | Partnership for Atlantic Cooperation[1] | 大西洋協力パートナーシップ | △ | 大西洋を挟む欧米・アフリカ・南米の協力枠組み。海洋安全保障・環境保護が中心。 | 大西洋地域の安全保障・海洋ガバナンスで米国のリーダーシップが後退。EU・アフリカ連合の連携が強まる可能性。 |
| 30 | Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia[1] | アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP) | ○ | アジア海域での海賊・武装強盗対策の情報共有機構。日本が主導的役割。 | 米国の海上保安協力が減少するが、日本主導のため影響は限定的。ただし米海軍の情報提供が減る可能性。 |
| 31 | Regional Cooperation Council[1] | 地域協力評議会(RCC) | × | バルカン諸国の地域協力・EU統合支援を行う機関。 | バルカン地域の安定化プロセスでの米国の関与が減少。ロシア・中国の影響力拡大余地。 |
| 32 | Renewable Energy Policy Network for the 21st Century[1] | 21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク(REN21) | ○ | 再エネ普及状況を毎年報告する国際ネットワーク。政府・NGO・企業が参加。 | 再エネ市場の国際統計・分析から米国視点が減少。政策提言への影響力も低下。 |
| 33 | Science and Technology Center in Ukraine[1] | ウクライナ科学技術センター(STCU) | ○ | 旧ソ連の軍事科学者を民生分野に転換支援する機関。米国・EU・日本が資金拠出。 | ウクライナの科学技術支援が縮小し、頭脳流出リスク増大。戦後復興での科学協力にも影響。 |
| 34 | Secretariat of the Pacific Regional Environment Programme[1] | 太平洋地域環境計画事務局(SPREP) | ○ | 太平洋島嶼国の環境保護・気候変動対策を支援する地域機関。 | 太平洋島嶼国の気候適応・海面上昇対策への米国支援が減少。中国・豪州の影響力が相対的に拡大。 |
| 35 | Venice Commission of the Council of Europe[1] | 欧州評議会ヴェネツィア委員会 | × | 欧州の憲法問題に関する諮問機関。民主主義・法の支配の基準を設定。 | 欧州の民主主義基準形成から米国が外れ、大西洋を跨ぐ民主主義同盟が弱体化。 |
国連関連機関31件の完全リスト
以下、トランプ政権が脱退・資金拠出停止を命じた国連関連機関・プログラム31件です[1][2]。
| No. | 機関名(英語) | 機関名(日本語) | 日本 加盟 |
役割・概要 | 脱退による影響 |
|---|---|---|---|---|---|
| 36 | U.N. Department of Economic and Social Affairs[1] | 国連経済社会局(UN DESA) | ○ | SDGs推進、経済・社会政策の分析を担当する国連事務局の中核部門。 | SDGs達成に向けた政策提言・統計分析での米国の関与が消失。途上国開発政策への影響力低下。 |
| 37 | U.N. Economic and Social Council (ECOSOC) — Economic Commission for Africa[1] | 国連アフリカ経済委員会(ECA) | ○ | アフリカの経済・社会開発を促進する国連地域委員会。 | アフリカ開発政策での米国の発言力低下。中国の「一帯一路」やロシアの影響力が相対的に拡大。 |
| 38 | ECOSOC — Economic Commission for Latin America and the Caribbean[1] | 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC) | ○ | 中南米の経済政策研究・統計分析を行う国連地域委員会。 | 中南米政策での米国の影響力が低下。中国・ロシアの経済外交が相対的に強まる。 |
| 39 | ECOSOC — Economic and Social Commission for Asia and the Pacific[1] | 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP) | ○ | アジア太平洋地域の経済・社会開発を推進する国連地域委員会。本部バンコク。 | アジア開発政策での米国の存在感が低下。中国主導の地域協力枠組み(RCEP、AIIB等)が相対的に拡大。 |
| 40 | ECOSOC — Economic and Social Commission for Western Asia[1] | 国連西アジア経済社会委員会(ESCWA) | ○ | 中東・アラブ諸国の経済・社会開発を支援する国連地域委員会。 | 中東復興・開発政策での米国の関与が減少。イラン・ロシア・中国の影響力拡大余地。 |
| 41 | International Law Commission[1] | 国際法委員会(ILC) | ○ | 国際法の法典化と漸進的発展を担う国連総会の補助機関。 | 国際法の解釈・発展プロセスから米国の法学者・外交官が後退。国際ルール形成での米国の影響力低下。 |
| 42 | International Residual Mechanism for Criminal Tribunals[1] | 旧ユーゴ・ルワンダ国際刑事法廷残余機構(IRMCT) | ○ | 旧ユーゴスラビアとルワンダの国際刑事法廷の残務処理を担う国連機関。 | 戦争犯罪・ジェノサイド裁判への米国の支援が停止し、国際刑事司法の信頼性低下。 |
| 43 | International Trade Centre[1] | 国際貿易センター(ITC) | ○ | 途上国の貿易促進・輸出支援を行う国連・WTO共同機関。 | 途上国企業の輸出力強化プログラムへの米国関与が消失。中国の貿易支援が相対的に拡大。 |
| 44 | Office of the Special Adviser on Africa[1] | 国連アフリカ特別顧問室(OSAA) | ○ | 国連のアフリカ開発アジェンダを推進する事務局組織。 | アフリカ開発政策での米国の発言力低下。NEPADなどアフリカ主導開発への支援減少。 |
| 45 | Office of the Special Representative of the Secretary-General for Children in Armed Conflict[1] | 紛争下の子どもに関する事務総長特別代表事務所 | ○ | 少年兵の動員禁止、紛争地の子ども保護を推進する国連機関。 | 紛争地での子ども保護プログラムへの米国資金・政治支援が消失。少年兵問題への対応力低下。 |
| 46 | Office of the Special Representative of the Secretary-General on Sexual Violence in Conflict[1] | 紛争下の性的暴力に関する事務総長特別代表事務所 | ○ | 紛争地での性暴力防止・被害者支援を担う国連機関。 | 紛争地の女性保護プログラムへの米国支援が停止。性暴力対策の国際規範形成が後退。 |
| 47 | Office of the Special Representative of the Secretary-General on Violence Against Children[1] | 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表事務所 | ○ | 児童虐待・暴力防止の国際アドボカシーを担う国連機関。 | 児童保護の国際規範形成・政策提言への米国の関与が消失。 |
| 48 | Peacebuilding Commission[1] | 平和構築委員会(PBC) | ○ | 紛争後の復興・平和構築を支援する国連の政府間諮問機関。 | 紛争後国家の復興プロセスへの米国の政策関与が後退。中国・ロシアの影響力拡大余地。 |
| 49 | Peacebuilding Fund[1] | 平和構築基金(PBF) | ○ | 紛争後の緊急復興支援を行う国連基金。米国は主要拠出国の一つ。 | 紛争後国家への緊急資金供給が減少し、復興の遅れ・紛争再発リスクが増大。 |
| 50 | Permanent Forum on People of African Descent[1] | アフリカ系の人々に関する常設フォーラム | ○ | 世界のアフリカ系住民の人権保護・差別撤廃を推進する国連機関。 | 米国内外のアフリカ系コミュニティ支援への米国の関与が消失。人種問題での国際協調が後退。 |
| 51 | U.N. Alliance of Civilizations[1] | 国連文明の同盟(UNAOC) | ○ | 異文化・異宗教間の対話促進、過激主義対策を担う国連イニシアティブ。 | イスラム世界と西側の対話プラットフォームから米国が撤退。文化・宗教間の緊張緩和メカニズムが弱体化。 |
| 52 | U.N. Collaborative Programme on Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries[1] | 国連森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減プログラム(UN-REDD) | ○ | 途上国の森林保全・REDD+を支援する国連プログラム。 | アマゾン・東南アジア・アフリカの森林保全資金が減少。違法伐採・森林火災対策が弱体化。 |
| 53 | U.N. Conference on Trade and Development[1] | 国連貿易開発会議(UNCTAD) | ○ | 途上国の貿易・投資・開発を支援する国連機関。本部ジュネーブ。[7] | 途上国側の視点に立った貿易ルール形成で米国の発言権が消失。南北格差問題での米国の影響力低下。 |
| 54 | U.N. Democracy Fund[1] | 国連民主主義基金(UNDEF) | ○ | 途上国の民主化・市民社会支援を行う国連基金。米国は設立時の主要拠出国。 | 権威主義体制下の市民社会・NGO支援が縮小。民主化運動への国際支援が弱体化。 |
| 55 | U.N. Energy[1] | 国連エネルギー | ○ | 国連機関間のエネルギー政策調整メカニズム。SDG7(エネルギーアクセス)推進。 | 途上国のエネルギーアクセス改善プログラムへの米国関与が消失。化石燃料 vs 再エネの国際議論が一層分断。 |
| 56 | U.N. Entity for Gender Equality and the Empowerment of Women (UN Women)[1] | ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women) | ○ | ジェンダー平等推進、女性の権利保護を担う国連機関。2010年設立。 | 途上国の女性教育・DV対策・政治参加支援が大幅縮小。ジェンダー平等の国際規範形成が後退。 |
| 57 | U.N. Framework Convention on Climate Change[1] | 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC) | ○ | 気候変動対策の国際枠組み。パリ協定の基盤条約。日本は1992年署名、1993年締結。 | 米国が気候変動交渉の枠組みから完全撤退。COP(国連気候変動会議)での米国不在が恒常化し、国際気候政策の実効性が大幅低下。 |
| 58 | U.N. Human Settlements Programme (UN-Habitat)[1] | 国連人間居住計画(UN-Habitat) | ○ | 都市化・住宅問題を扱う国連機関。スラム改善、持続可能な都市開発を推進。 | 途上国のスラム対策・ 都市インフラ整備への米国支援が減少。急速な都市化に対応できず、環境・衛生問題が悪化する懸念。 |
| 59 | U.N. Institute for Training and Research[1] | 国連訓練調査研究所(UNITAR) | ○ | 途上国の外交官・公務員の研修を行う国連機関。本部ジュネーブ。 | 途上国政府の能力構築プログラムへの米国支援が停止。人材育成での米国の影響力低下。 |
| 60 | U.N. Oceans[1] | 国連海洋(UN-Oceans) | ○ | 国連機関間の海洋政策調整メカニズム。海洋保護・持続可能な漁業を推進。 | 海洋プラスチック対策・違法漁業取締りでの米国の関与が減少。中国の海洋進出への牽制力が低下。 |
| 61 | U.N. Population Fund (UNFPA)[1] | 国連人口基金(UNFPA) | ○ | 家族計画、母子保健、リプロダクティブ・ヘルスを支援する国連機関。[8] | 途上国の妊産婦死亡率低下、家族計画プログラムが大幅縮小。中絶を巡る米国内政治が国際保健に波及。 |
| 62 | U.N. Register of Conventional Arms[1] | 国連通常兵器登録制度 | ○ | 通常兵器の国際移転を透明化する国連の登録制度。 | 武器取引の透明性向上メカニズムから米国が外れ、違法武器取引・紛争地への武器流入監視が弱体化。 |
| 63 | U.N. System Chief Executives Board for Coordination[1] | 国連システム行政長官調整理事会(CEB) | ○ | 国連諸機関の政策調整を行う事務レベルの調整機関。 | 国連システム全体の政策調整から米国の影響力が低下。国連改革・効率化への米国の関与が弱まる。 |
| 64 | U.N. System Staff College[1] | 国連システム職員大学(UNSSC) | ○ | 国連職員の研修・能力開発を担う機関。本部トリノ(イタリア)。 | 国連職員の教育プログラムへの米国の関与が減少。国連内での米国の人的影響力が低下。 |
| 65 | U.N. Water[1] | 国連水(UN-Water) | ○ | 国連機関間の水資源政策調整メカニズム。SDG6(水・衛生)推進。 | 途上国の水資源管理・衛生改善プログラムへの米国支援が停止。水不足・水紛争リスクへの対応力低下。 |
| 66 | U.N. University[1] | 国連大学(UNU) | ○ | グローバル課題の学術研究・政策提言を行う国連機関。本部東京。 | 持続可能性・平和構築の研究拠点への米国学者の参加が減少。日本が本部を置く機関だけに、日本への影響も大きい。 |
日本への影響
66機関のうち、日本が正式に加盟・参加している機関は約55件に上ります。特に以下の分野で日本への影響が大きいと考えられます。
1. 気候変動・環境分野
- UNFCCC、IPCC、IRENA、IUCN等から米国が撤退することで、日本が主要国として残る責任が増大
- 気候資金(Green Climate Fund等)の穴埋めを日本・EUが求められる可能性
- 太平洋島嶼国支援(SPREP等)で日本の役割拡大が期待される
2. 国連大学(本部:東京)
- 唯一日本に本部を置く国連機関からの米国撤退は、日本の国連外交にとって象徴的な打撃
- 米国研究者・資金の減少により、研究プログラムの規模縮小リスク
3. アジア太平洋地域協力
- ESCAP、ReCAAP等で日本がリーダーシップを取る機会が増える一方、米国の支持を失う
- 中国の影響力拡大に対する「民主主義陣営」の結束が弱まる懸念
4. 開発援助・ODA政策
- UNCTAD、UNFPA、UN Women等での日本の発言力・負担が相対的に増大
- 米国不在の中、日本がどこまで開発援助のルール形成をリードできるかが問われる
脱退による世界的影響の総括
1. 多国間主義の後退
66機関からの一斉脱退は、第二次世界大戦後に構築された「国際協調に基づく秩序」からの米国の離脱を象徴しています[2]。トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を掲げ、二国間取引を重視する姿勢を鮮明にしています。
2. 中国・ロシアの影響力拡大
米国が抜けた空白を、中国やロシアが埋める可能性が高まります。特に開発援助、気候変動、人権分野で、欧米型の規範が後退し、権威主義的なガバナンスモデルが広がるリスクがあります[4]。
3. グローバル課題への対応力低下
気候変動、パンデミック、難民危機、サイバーセキュリティなど、国境を越える課題への国際協調が弱まります。WHO、UNFCCC、IPCC等からの脱退により、科学的根拠に基づく政策形成の基盤が揺らぎます[9]。
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4. 同盟国との関係悪化
NATO等の軍事同盟は含まれていないものの、環境・人権・開発分野での米欧協調が大きく後退します。EU、カナダ、日本など民主主義陣営の結束が試されることになります[10]。
参考資料・外部リンク
- [1] AP News「The 66 global organizations the US is leaving」(2026年1月8日)
- [2] NPR「U.S. to exit 66 international organizations in further retreat from global cooperation」(2026年1月8日)
- [3] 米国務省「Withdrawal from Wasteful, Ineffective, or Harmful International Organizations」(2026年1月7日)
- [4] Earth.Org「US Withdraws From 66 Int’l Bodies, Including Key Climate and Human Rights Agencies」(2026年1月8日)
- [5] 外務省「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の概要」
- [6] 外務省「国際自然保護連合(IUCN)」
- [7] 国連広報センター「国連貿易開発会議(UNCTAD)」
- [8] 国連広報センター「国連人口基金(UNFPA)」
- [9] CNN「Trump moves to pull US out of bedrock global climate treaty」(2026年1月8日)
- [10] Devex「Trump withdraws, defunds dozens of international orgs and treaties」(2026年1月7日)
まとめ:歴史的転換点となる66機関からの一斉脱退
トランプ政権による66の国際機関からの脱退は、戦後国際秩序の大きな転換点となる可能性があります。
重要なポイント
- 規模の大きさ:非国連系35件、国連系31件の合計66機関という史上最大規模の脱退
- 対象分野:気候変動、人権、開発援助、ジェンダー、環境保護など広範囲に及ぶ
- 日本への影響:日本が加盟する約55機関が含まれ、特に気候・環境分野で責任が増大
- 世界秩序への影響:多国間主義の後退、中国・ロシアの影響力拡大、グローバル課題への対応力低下
今後、EU、日本、カナダなど民主主義陣営が、米国不在の中でどこまで国際協調を維持できるかが問われます。また、途上国支援や気候変動対策で生じる「資金の穴」を誰が埋めるのかも焦点となります[2]。
一方で、トランプ政権は「米国の主権回復」「無駄な拠出金の削減」を強調しており、国内支持層からは歓迎の声も上がっています。2028年の大統領選挙結果次第では、再び方針転換する可能性もあり、国際社会は米国の「出入り」を前提とした新たな枠組み作りを模索することになるでしょう[11]。
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よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ66という数なのか?
A. 国務省が全国際機関を精査した結果、「米国の利益に反する、冗長、無駄、有害」と判断された機関が66件だったとされています[3]。今後も追加の脱退が検討されています。
Q2. WHOやUNESCOからも脱退するのか?
A. はい、今回のリストには含まれていませんが、別途WHOとUNESCOからの脱退も発表されています[2]。トランプ第1期政権でも同様の措置を取っており、今回は「再脱退」となります。
Q3. 日本にとって最も影響が大きい脱退は?
A. 国連大学(本部:東京)、UNFCCC(気候変動枠組み条約)、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)あたりが特に影響大です。日本が主導的役割を果たす分野で米国の支持を失うことになります。
Q4. 米国は国連そのものからも脱退するのか?
A. 今回の66機関リストに「国連本体(総会・安保理)」は含まれていません。ただし、国連の多くの専門機関・プログラムからは脱退するため、実質的な影響は極めて大きいです。
Q5. 次の政権で復帰する可能性は?
A. 過去の例(パリ協定、WHO)を見ると、政権交代で復帰する可能性は十分あります。しかし、その度に米国の信頼性は低下し、他国は「米国不在」を前提とした枠組み作りを進めるでしょう。



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