この現実を、現地からのバズ動画と専門家の解説という“二つのレンズ”で見せてくれるのが、旅系YouTuber・BAPPA SHOTA(バッパショウタ)さんの現地レポート動画と、テレビ東京系「池畑修平の国際ニュースCORE」でのベネズエラ特集です。
本記事では、この2つのYouTube動画を軸に、ベネズエラのハイパーインフレの実態、チャベス前大統領が残した「負の遺産」、そして日本への教訓までを分かりやすくまとめます。
「通貨安&物価高の行き着く先はどうなるのか?」を考える上で、非常に示唆に富む内容です。
BAPPA SHOTAさんの現地レポ動画:
究極に通貨安&物価高になった国の地獄化した現実
池畑修平の国際ニュースCORE ベネズエラ回:
13万%のハイパーインフレ!“世界一危険”なベネズエラで今何が起きている?
BAPPA SHOTAが見た「地獄化した現実」
まず押さえておきたいのが、BAPPA SHOTAさんの動画が伝える「生活感を伴ったハイパーインフレ」の姿です。
観光ガイドではなく、カラカスの地下鉄、ローカル食堂、ブラックマーケットを歩き回り、現地の人にインタビューすることで、通貨安・物価高・低賃金が同時進行したとき何が起きるのかが立体的に浮かび上がります。
動画内では、次のような具体的なシーンが印象的です。
- 地下鉄の駅や車内は意外と整備されている一方で、「1回乗車5ボリバル」がデノミ前換算では「500兆ボリバル」に相当するという通貨価値の崩壊ぶり
- コンビニのような売店で水1本25ボリバル、スナック菓子25〜55ボリバル、輸入チョコは2ドルと、最低賃金から見ればとても手の届かない価格帯になっていること
- ローカル食堂の1食が5〜6ドルと、日本と大差ない金額であるのに、現地の最低賃金では「1カ月働いてようやく食べられるレベル」になってしまっていること
こうした“ミクロな現場感”は、統計だけでは絶対に伝わりません。
「ビール1本(約1ドル)を飲むために1週間分の賃金が飛ぶ」「副業や闇市場なしでは生きていけない」という、暮らしの視点から見た経済破綻のリアルが、BAPPA SHOTA動画の大きな価値と言えます。
COREが解説する「13万%ハイパーインフレ」とチャベスの負の遺産
一方、「池畑修平の国際ニュースCORE」ベネズエラ回では、青山学院大学教授の池畑修平氏がMCを務め、アジア経済研究所の坂口安紀氏がゲストとして、ベネズエラの政治・経済をマクロ視点から解説しています。
ここでキーワードになるのが、「13万%のハイパーインフレ」と「チャベス前大統領の負の遺産」です。

番組の中で指摘されているポイントは、ざっくり言うと次の3つです。
- ベネズエラは2010年代に、年間インフレ率が13万%クラスに達し、国民の体感としては「毎月お金の価値が激しく溶けていく」状態が続いたこと
- 2014年以降、7年連続で経済がマイナス成長となり、GDP規模はおよそ5分の1にまで縮小したとされること
- 戦争をしているわけでもないのに、ここまで深刻な経済破綻に至ったのは、石油依存とポピュリズム政策、そして権威主義的な統治が重なった結果だということ
坂口氏は、自身の著書「ベネズエラ―溶解する民主主義、破綻する経済」でも、チャベス前大統領の政策を「負の遺産」として位置づけています。
石油価格が高かった時期に、低所得層向けの住宅建設や社会プログラムを一気に拡大したことで、短期的には支持を集めたものの、その裏で債務が積み上がり、国営石油企業の生産性も低下していきました。
チャベス亡き後、そのツケを一気にかぶる形になったのが、後継のマドゥロ政権です。
石油価格が下落し始めたタイミングと、債務返済の本格化が重なり、通貨増発と価格統制に頼らざるを得なくなった結果、ハイパーインフレと経済崩壊が一気に表面化したと解説されています。
ノーベル平和賞・マリア・コリナ・マチャドと「溶解する民主主義」
COREのベネズエラ特集では、2025年のノーベル平和賞を受賞した野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏にもスポットが当たっています。
彼女は「ベネズエラの鉄の女」とも呼ばれ、権威主義政権に対して非暴力的な民主化闘争を続けてきた人物です。
番組内で語られるポイントは、次のようなものです。
- ベネズエラでは過去20年ほど、国政選挙に機械投票が導入されており、投票終了後に集計結果がレシートのような紙で出力される仕組みになっていること
- マチャド陣営は、全国の野党立会人に「そのレシートを写真に撮って中央に送る」よう指示し、数万カ所分の集計表を短期間で集約・公開することで、選管が発表した結果との“食い違い”を可視化したこと
- この手法により、マドゥロ大統領が「どの州でも勝っていない」ことを証明する形になり、世界的な注目を集めたこと
こうした動きは、「選挙の正当性」をめぐる闘いであり、同時に「情報技術を用いた市民側からの監視」の一例とも言えます。
マチャド氏のノーベル平和賞受賞は、経済だけでなく「民主主義の溶解」という側面からもベネズエラを見つめるきっかけになりました。
難民流出と「マドゥロ・ダイエット」:崩壊する日常
経済破綻の最前線にいるのは、いつも普通の人々です。
坂口氏の解説によると、2018〜2019年ごろのベネズエラでは、食料と医薬品の不足が深刻化し、多くの人が1日1〜2食に切り詰めざるを得ない状況に追い込まれました。
特にショッキングなのは、次のようなエピソードです。
- ある調査では、国民の平均体重が短期間で約9キロ減少したとされ、その“強制的な減量”を皮肉って「マドゥロ・ダイエット」と呼ぶ声が出たこと
- 粉ミルクが手に入らず、栄養不足で乳児が命を落とすケースが相次いだこと
- 年金ではとても生活できず、70代・80代になっても路上で物売りをせざるを得ない高齢者が増えたこと
BAPPA SHOTAさんの動画でも、月数ドルの年金しか受け取れず、路上でキャンディを売る76歳の高齢者が登場します。
「これでは食べていけない」と語るその姿からは、統計の数字以上の重さが伝わってきます。
こうした状況を生き延びる術として、多くのベネズエラ人が国外に脱出しました。
国際機関やNGOの報告では、周辺国や北米に逃れた難民・移民はすでに人口の約4分の1に達しており、「国全体が静かに空洞化している」とも表現されています。
ベネズエラ難民・移民の最新状況については、以下のようなレポートが参考になります。
ベネズエラの貧困の原因と現在の状況:経済破綻の経緯や難民数
ベネズエラ難民の現状と受け入れ国
ハイパーインフレのメカニズムと歴史的事例との共通点
ベネズエラのケースは極端に見えますが、ハイパーインフレそのもののメカニズムは、歴史上の他の事例と共通する部分が多くあります。
代表的なのが、ワイマール期ドイツやジンバブエ、戦後ハンガリーなどです。
一般的に、ハイパーインフレには次のような流れが見られます。
- 政治・社会の混乱(政権交代、内戦、独裁化など)
- 財政赤字の拡大と、国債発行や中央銀行による通貨増発への依存
- 通貨への信認低下と為替レートの急落
- 輸入物価の高騰と生活必需品の不足
- さらなる通貨増発と価格統制による悪循環
ベネズエラの場合も、
「石油依存 × ポピュリズム政策 × 権威主義的統治 × 対外制裁」
という複合要因が、同じパターンを加速させたと言えるでしょう。
BAPPA SHOTAの現場映像とCOREのマクロ解説を合わせて見ることで、この構図がよりクリアに理解できます。
円安・物価高の日本は大丈夫か?ベネズエラからの教訓
日本でも近年、円安と物価高が進行し、「このままベネズエラのようになるのでは?」という不安の声がXなどで散見されます。
実際、日本とベネズエラでは前提条件が大きく違うものの、「学ぶべき教訓」は少なくありません。
ベネズエラから読み取れる警鐘を、あえて日本語に翻訳すると次のようになります。
- 通貨安と物価高は、“じわじわ”と生活を蝕み、気づいたときには元に戻すのが非常に難しい
- 名目賃金が物価上昇に追いつかない状態が続くと、中間層が崩壊し、社会全体の安定が失われる
- 社会保障や年金がインフレに連動しないと、高齢者や子どもなど「弱い立場」の人から順番に追い詰められる
- 財政赤字を安易に通貨発行で埋める体質が固定化すると、通貨への信認が損なわれるリスクが高まる
BAPPA SHOTAの動画は「もし日本で同じことが起きたら?」とイメージするための“シミュレーション映像”にもなります。
一方、COREの番組は、なぜそうなったのかを「構造」と「政策」のレベルで理解させてくれます。
2本の動画をセットで見ることで、「感情」と「理屈」の両方からベネズエラを捉えることができ、日本の今と未来を考えるうえでも非常に有益です。
まだ見ていない方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
・BAPPA SHOTA現地レポ:究極に通貨安&物価高になった国の地獄化した現実
・国際ニュースCORE:13万%のハイパーインフレ!“世界一危険”なベネズエラで今何が起きている?
[1](https://x.com/kosuke_agos/status/2008429058997318000)


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