また確認されたミサイル発射と、今回Jアラートが鳴らなかった理由
2026年1月初め、「北朝鮮からミサイルのようなものが発射された」とのニュースが相次ぎましたが、今回(2026年1月3〜4日)の発射に対しては、日本国内でJアラートは発令されていません。ロイターによると、韓国軍合同参謀本部は2026年1月4日、北朝鮮が同国東海岸沖に向けて弾道ミサイルを発射したと発表し、日本の海上保安庁も「弾道ミサイルの可能性があるものが発射され、すでに落下した」としています(ロイター「北朝鮮が東岸沖へ弾道ミサイル発射、すでに落下か」Reuters)。
日本の防衛省も、2026年1月4日午前8時ごろに「北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射した」と発表していますが(日本経済新聞「北朝鮮が弾道ミサイル発射の可能性 防衛省発表」日経電子版)、今回の飛翔経路は日本の領土・領海や上空を通過するものではないと判断されたため、Jアラートは使用されませんでした。Jアラートは「日本に飛来・通過の可能性」がある場合に限って運用されるため、その条件に当たらなかったと考えられます(内閣官房 国民保護ポータルサイト「北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する場合」公式ページ)。
過去5年で北朝鮮ミサイル発射はどう変化したか
北朝鮮による弾道ミサイルや「衛星」名目のロケット発射は、ここ数年「年数十発」が当たり前になりつつあります。その中で、日本政府がJアラートを出すのは、日本の領土・領海、または上空を通過する可能性がある一部のケースに絞られています(内閣官房解説を掲載した防衛白書サイト「解説>Jアラートによる弾道ミサイルに関する情報伝達」防衛省)。
- 2021年頃:北朝鮮のミサイル発射は複数回確認されましたが、日本上空通過や国内落下の恐れが小さいケースが多く、住民向け警報が鳴ることは限定的でした。
- 2022年:10月4日に2017年以来5年ぶりとなる本格的な「日本本土上空通過」の弾道ミサイルが発射され、日本国内で大きな衝撃を与えました。
- 2023年:北朝鮮は少なくとも25発の弾道ミサイルを発射し、その結果として日本では4回、住民向けの警報発出が行われたと内閣官房の解説で説明されています(防衛省「解説>Jアラートによる弾道ミサイルに関する情報伝達」同ページ)。
- 2024年:軍事偵察衛星打ち上げ名目の発射などが相次ぎ、沖縄県を対象とした深夜の避難呼びかけが大きな話題となりました(後述)。
- 2025年:消防庁や総務省がまとめる令和6年版消防白書の概要では、2023〜2024年の発射・警報事案が整理されており、2024年以降も発射が継続していることがまとめられています(総務省「令和6年版 消防白書の概要(後編)」note)。
つまり、「北朝鮮の発射回数」自体はこの5年で増え続けているものの、そのすべてで日本の住民に向けた警報が鳴っているわけではなく、「日本に飛来・通過する恐れのある一部」に対してのみ警報が出されている構図です。
2022年10月4日:5年ぶりの日本上空通過ミサイル

具体的な日時と飛翔経路
象徴的な事案が、2022年10月4日の弾道ミサイル発射です。首相官邸の発表によれば、北朝鮮は2022年10月4日7時22分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発を東方向に向けて発射しました(首相官邸「令和4年10月4日(火)午前 官房長官記者会見」首相官邸)。
消防庁がまとめた資料とNHKの解説によると、このミサイルは日本上空を通過し、次のようなタイムラインで日本側の情報伝達が行われています(消防庁「令和4年10月4日及び11月3日の北朝鮮による弾道ミサイル発射に伴う対応」消防庁PDF、NHK放送文化研究所「北朝鮮ミサイル発射で誤情報,政府がJアラートを改善へ」NHK)。
- 7時22分ごろ:北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射。
- 7時27分:日本側でミサイル発射を確認し、北海道・東京都島しょ部を対象に情報を伝達。
- 7時29分:青森県などにも国民保護情報を伝達。
- 7時44分ごろ:東北地方の東約3200km、日本のEEZ外側の太平洋に落下したと推定。
この事案は、「2017年以来5年ぶりの日本上空通過」として国内外で大きく報じられました(ニッポンドットコム「北朝鮮ミサイル発射でJアラート:発令は2017年以来5年ぶり」nippon.com)。
情報の「分かりにくさ」への批判と改善
一方で、このときの情報伝達は、「どこに逃げればよいか分からない」「対象地域の表示が理解しづらい」といった批判も多く、情報の出し方や表現方法が問われました。NHKはこの事案を踏まえて、政府が警報メッセージの内容や表示方法の改修を進めることになったと解説しています(NHK放送文化研究所「北朝鮮ミサイル発射で誤情報,政府がJアラートを改善へ」NHK)。
2023〜2024年:発射増加と深夜の避難呼びかけ
2023年:少なくとも25発
防衛省がまとめた内閣官房の解説によると、北朝鮮は2023年に弾道ミサイルの可能性のある飛翔体を少なくとも25発発射しています(防衛省「解説>Jアラートによる弾道ミサイルに関する情報伝達」防衛省)。
消防庁の個別資料では、例えば次のような日時でミサイル発射と住民向け情報伝達が実施されています。
- 2023年4月13日7時55分:北朝鮮からのミサイル発射を受け、北海道などを対象に避難呼びかけが行われ、同日8時16分には訂正情報が配信されました。毎日新聞はこの件を「速報重視で『空振り』覚悟の発令」として精度の課題を指摘しています(毎日新聞「Jアラート、精度不足浮き彫り 速報重視で『空振り』覚悟の発令」毎日新聞、消防庁「令和5年4月13日北朝鮮によるミサイル発射に伴う対応」PDF)。
- 2023年8月24日3時54分:北朝鮮のミサイル発射に伴い、発射情報と避難呼びかけが伝達され、その後に避難解除が伝えられた事案も消防庁資料に残っています(消防庁「令和5年8月24日北朝鮮によるミサイル発射に伴う対応」PDF、ANNニュース「【Jアラート】北朝鮮がミサイル発射 避難の呼びかけ解除 4時ごろ」YouTube)。
2024年5月27日:沖縄で深夜の「衛星」名目発射
2024年の代表的事案が、沖縄での深夜の避難呼びかけです。ロイターによると、北朝鮮は2024年5月27日22時44分ごろ、北西部の東倉里付近から軍事偵察衛星打ち上げを名目とする飛翔体を発射しました(ロイター「北朝鮮、衛星打ち上げに失敗 通告期間内の挑発行為に警戒と日本政府」Reuters)。
これを受け、日本政府は2024年5月27日22時46分に沖縄県を対象として避難を呼びかけ、その後、飛翔体が黄海上空で爆発し消失したとして、23時03分に避難呼びかけを解除しました(消防庁「令和6年5月27日北朝鮮による発射に伴う国民保護情報の伝達状況」PDF、読売新聞オンライン「北朝鮮が弾道ミサイル、発射直後に爆発か…『Jアラート』は15分後に解除」読売新聞)。
読売新聞は、2024年5月27日深夜に沖縄県内で警報音が鳴り響き、多くの住民が寝ている時間帯に避難を促されたことで、「また北朝鮮か」「本当に落ちる日が来るのでは」といった怒りや不安の声が上がった様子をレポートしています(読売新聞オンライン「沖縄県『Jアラート』発令、深夜に鳴り響く警報音…」読売新聞、テレ東BIZ「深夜に『Jアラート』で避難呼びかけ… 北朝鮮 ミサイル発射も失敗」YouTube)。
2026年1月3〜4日の発射はなぜ「いつもの警報」が鳴らなかったのか
改めて、最新の2026年1月3〜4日の発射に戻ると、韓国軍は東海岸沖に向けた弾道ミサイル発射を確認し、日本の海上保安庁も「弾道ミサイルの可能性があるものが発射され、すでに落下した」と発表しています(ロイター「北朝鮮が東岸沖へ弾道ミサイル発射、すでに落下か」Reuters)。
日本経済新聞は、防衛省が2026年1月4日午前8時ごろ、「北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射した」と公表したと報じていますが、日本列島やEEZ付近に落下する恐れはないと判断されたため、住民に向けた警報は使用されなかったとしています(日本経済新聞「北朝鮮が弾道ミサイル発射の可能性 防衛省発表」日経電子版)。
内閣官房は、「北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する、または日本の領土・領海の上空を通過する可能性がある場合」に限り、住民に対して国民保護情報を発信すると説明しています(内閣官房 国民保護ポータルサイト「北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する場合」公式ページ)。今回のミサイルは「日本に飛来する可能性がない」と評価されたため、ニュース速報は出ても、スマホや広報スピーカーが一斉に鳴るような状況には至らなかったと整理できます。
Xでの声と、これからの課題
今回のように「ミサイルは発射されたが、大きな警報は鳴らない」ケースでは、X(旧Twitter)上でも「結局どれが危ない発射なのか分からない」「ニュース速報だけだと危機感が薄れる」といった声が出がちです。過去の事案でも、「何度も警報が鳴るうちに誰も避難しなくなった」「でも、いつか本当に落ちるのでは」という矛盾した感情が多く投稿されてきました(毎日新聞「Jアラート、精度不足浮き彫り」毎日新聞、読売新聞オンライン「沖縄県『Jアラート』発令、深夜に鳴り響く警報音…」読売新聞)。
各自治体は、ミサイル発射時の住民行動をわかりやすくまとめたページを公開しており、例えば神奈川県茅ヶ崎市は「屋外にいる場合は頑丈な建物や地下に避難する」「屋内にいる場合は窓から離れる」といった具体的な対応を示しています(茅ヶ崎市「弾道ミサイルから身を守る行動について」茅ヶ崎市公式)。今後も北朝鮮の発射が続くことを考えると、「どのようなケースで住民向け警報が発せられるのか」「警報が鳴ったとき何をすればよいのか」を平時から整理し、生活者目線で情報を届けることが、2026年以降の大きな課題になっていきそうです。
複雑な国際情勢との関係も

今回のミサイルは、26年1月3日行われたアメリカのベネスエラに対する大統領勾留と攻撃に対する抗議をロシアが声明を出しており、それに同調するようにミサイルを発射している可能性があります。アメリカの同盟国である日本も標的だぞという意思表示かもしれません。
今後も複雑な国際情勢による影響には注意が必要です。


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