2026年1月4日、メジャーリーガー・ダルビッシュ有選手の「長距離ランニング不要論」が、X(旧Twitter)上で再び大きな話題となっています。しかし、この発言の「切り取り方」が誤解を生んでいるとして、ダルビッシュ選手本人がXで異議を唱え、5,600件超のポストが飛び交う事態に発展しました。本記事では、ダルビッシュ選手の発言の真意、走り込みを推奨する指導者・選手の意見、科学的根拠に基づく否定派の主張を、X上の声や過去の事例も交えながら徹底的に解説します。
ダルビッシュ有選手がXで異議「この切り取り方は誤解を生む」
2026年1月4日午前、ダルビッシュ有選手(@faridyu)は自身のXアカウントで次のように投稿しました。
「この切り取り方は誤解を生むので困ります。これはあくまで野球選手の話であり、この取材内でもショートダッシュに関しては肯定しているので走るという行為自体は否定していません。長時間にわたる過負荷なランメニューを主に否定しております。」
この投稿に対して、X上では「これ前から思ってたけど、ダルビッシュさんは高校野球にありがちな何の目的かよく分からない長距離ランニングを否定してただけなんですよね。俗に言う『走り込み』を🤷」「ダルビッシュ有ことTwitterレスバトル芸人faridyuさんの『走り込み否定』ってあくまで『野球における長距離ランニングを否定(短距離ダッシュは肯定)』してるんであって、『走るトレーニング全てを否定』してるわけではなかったのね」といった共感の声が相次いでいます。
なぜ「ランニング不要論」は誤解されたのか?発言の経緯と背景
2017年:テレビ番組での発言が発端
ダルビッシュ選手の「走り込み不要論」が最初に大きな注目を集めたのは、2017年のG+(テレビ番組)のインタビューでした。この際、ダルビッシュ選手は「走り込みは不要」という趣旨の発言をし、野球界に大きな波紋を広げました(参考:田口図さんブログ)。この発言はSNSを通じて瞬く間に拡散されましたが、その過程で「ダルビッシュはランニング自体を全否定している」という極端な解釈が一人歩きしてしまいました。
2023年:谷繁元信氏との対談で真意を語る
2023年12月、元中日ドラゴンズ捕手の谷繁元信氏との対談(YouTube動画「【谷繁×ダルビッシュ有】ランニング不要論をダルビッシュ本人に直撃」YouTube)で、ダルビッシュ選手は改めて真意を説明しています。
「昔の高校野球でありがちな、何時間も走り続けたり長距離を走るっていうのは、コンディショニングにおいたりとか、野球っていうスポーツの特性を見た時にやっぱりマイナスになる部分がある。でも、目的を立てて距離を変えていくとか、ちゃんと目的があるようなランニングというか、そのコンディショニングに関してはすごく自分も重要視している」
つまり、ダルビッシュ選手が否定しているのは「目的が不明確で過剰な長距離走」であり、短距離ダッシュやコンディショニング目的の軽いジョギングは肯定しているのです(スポルティーバ「ダルビッシュ有の『野球に走り込みは必要ない』理論を徹底解剖」)。
【否定派の主張】野球選手にとって「長距離ランニング」は本当に不要なのか?

野球は「無酸素運動」が中心のスポーツ
科学的に見ると、野球のプレーは90%以上が10秒未満の短時間動作で構成されており、エネルギー供給システムは無酸素性(ATP-CP系・解糖系)が主です(Szymanski, 2018)。つまり、サッカーやマラソンのような持続的な有酸素運動とは根本的に異なります。試合中の選手の平均心拍数も比較的低く(120-140bpm程度)、長距離走で鍛えられる有酸素持久力の必要性は限定的だとされています(note記事「野球選手は走り込みは必要ない科学的な理由」)。
長距離走のデメリット:速筋繊維への悪影響
長距離走は遅筋繊維を優位に働かせますが、野球で必要な速筋繊維(パワー・スピード)との適合性が低いという問題があります。過剰な走り込みは筋力や瞬発力の低下を招く可能性があり、むしろマイナスに働くケースがあると指摘されています(Cissik, 2004)。Full-Countの記事では、ソフトバンクで指導する野球スキルコーチの菊池タクト氏が長距離走を「非効率的」と指摘しており、「基礎体力向上には一定の効果がある可能性があるが、出力が出せるようになった選手には、野球に必要な速筋繊維とは違う筋肉の発達を促してしまう懸念がある」と述べています(Full-Count記事)。
否定派が推奨するトレーニング
科学的に効果が認められているのは、以下のようなトレーニングです:
- 短距離ダッシュ(10-30m):野球のエネルギー代謝に近く、スピードと回復力向上に有効(Hoffman et al., 2004)
- インターバルトレーニング:短距離走と休息を繰り返す方法で、瞬発力と持久力を両立
- プライオメトリクス:ジャンプや方向転換のトレーニングで、爆発力と敏捷性を高める(Ebben et al., 2005)
- ウェイトトレーニング:投球速度や打撃力の向上に直接寄与(DeRenne et al., 2009)
現役高校生が書いたnote記事では、「野球に長距離ランは本当に必要か?現役高校生の僕が100メートル以上のランメニューを全部やめた理由」として、30メートルダッシュ10本を週2回に変更したところ、筋肉を落とすことなく野球に直結する足腰の強さを作れたと報告しています(note記事)。
【肯定派・推奨派の主張】走り込みは野球に必要不可欠
ソフトバンク・柳田悠岐選手「走ることは全身運動」
一方で、プロ野球界には「走り込み肯定派」も多く存在します。福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手は、アルペングループのインタビューで次のように語っています。
「走ることは全てのスポーツに通ずると思いますからね。『走ることは全身運動なので全ての筋肉がつく』ということを、工藤公康監督から教わりました。2016年の秋に1ヶ月間走り込みをすると、体の筋肉量が凄く上がりました」
柳田選手は短距離、中距離、長距離を組み合わせたメニューを実施しており、「瞬発力を上げたり、全身の筋力をつけたい」と目的を明確にしています(アルペングループ公式)。
イチロー選手「野球選手は走れなきゃだめ」
メジャー通算3000本安打を達成したイチロー選手も、走ることの重要性を強調しています。近年盛んに取り上げられるランニング不要論に対して、イチロー選手は次のように語っています。
「野球選手は走れなきゃだめ。理由関係なく、必要とか不必要ではなく。立ち姿や歩く姿、走る姿が不細工ではいけない」
イチロー選手は、走ることが単なる体力づくりだけでなく、「選手としての美しさ」にも関わると考えているようです(読んで上達するゴルフnote)。
走り込みのメリット:5つの効果
走研究所のブログでは、走り込みを行うメリットとして次の5つを挙げています(走研究所ブログ):
- スタミナが向上する
- 心肺機能が向上する
- 体幹と四肢の連動性が向上する:一定のリズムで左右対称に体幹部と四肢を連動させる効果が期待でき、バッティングやピッチングで体がブレない調整力を養う
- 下半身の筋力を強化できる
- 実戦に近い状態で同じ動きを繰り返す練習になる
ただし、同ブログでは「良い走りでの走り込みはOK(パフォーマンスを上げる)」「悪い走りでの走り込みはNG(パフォーマンスを下げる)」と、走り方の質が重要だと強調しています。
日本体育大学の見解:目的を明確にした走り込み
投手王国として知られる日本体育大学のコーチは、YouTubeインタビューで「投手に長距離走は必要?」という問いに対し、「目的を明確にすれば有効」と答えています(YouTube動画)。先発投手にはスタミナも求められるため、100〜200メートルのインターバル走を取り入れるなど、目的を明確にした使い分けが不可欠だとしています。
X上の声:ファンやトレーナーはどう見ている?
「誤解してた」「印象操作だった」という声
X上では、今回のダルビッシュ選手の投稿を受けて、多くのユーザーが「今まで誤解していた」と反応しています:
「ダルビッシュランニング不要論、悲しくて調べたら切り取りというか変に伝わってるね…要は野球の上達のためにただ長距離走っても逆効果だよって意味みたい、本人も調整のために軽めのランニングしてるしね🏃」(@wU192pGRGpxj1Bw、2025年8月20日投稿)
「ダルビッシュは『昔ながらの長距離を走り続けるトレーニングは、野球の特性ではマイナス。そういうのは排除すべき』と説明。〜『スポーツ全般ランニングは大事』が持論。両者『必要なランニングはある』という考えで一致した。」(@Adri_Kono、2025年8月19日投稿)
専門家やAI(Grok)の見解も
X上のAI「Grok」も、この議論に参加しています:
「野球ではピッチャーは試合で長距離走らないけど、トレーニングでランニングやダッシュは持久力・瞬発力向上に役立つよ。ダルビッシュ選手の意見みたいに、血行促進だけならお風呂で十分かも。でも目的次第で必要性変わると思う。」(@grok、2026年1月3日投稿)
「ダルビッシュの言葉は2019年のインタビューで実際に発言されたものです(野球のトレーニング文脈で)。ランニングの効果は血行促進以外にも心肺機能向上、精神衛生、筋力維持など複数あります。ただし、投手向けに過度な長距離走は筋肉減少のリスクを指摘する意見も。個人の目標によるでしょう。」(@grok、2025年8月19日投稿)
過去の類似事例:プロ野球界の「走り込み論争」
2020年:阿部慎之助監督の「罰走」に対するダルビッシュの苦言
2020年7月、巨人の阿部慎之助2軍監督(当時)が早稲田大学に敗戦後、選手たちに「罰走」を命じたことが話題になりました。これに対し、ダルビッシュ選手はXで「走る選手はメジャーで通用しない」と苦言を呈しています(プレジデントオンライン「ダルビッシュ有が早大に負けた巨人阿部2軍の『罰走』に物申したワケ」)。ダルビッシュ選手の主張は、「一定レベルの技術を持つプロ選手に対して、監督やコーチが過剰な走り込みや投げ込みを命じるのはおかしい」というものです。プレジデントオンラインの記事では、「ダルビッシュはトレーニングとしてのランニングを否定しているわけではない。だが、一定レベルの技術を持つプロ選手に対して、監督やコーチが過剰な走り込みや投げ込みを命じるのはおかしい、という考えだ」と解説されています。
イチロー選手との対比:多様なトレーニング哲学
一方で、同じメジャーリーガーでも、イチロー選手はウェイトトレーニングよりも柔軟性や独自のトレーニングを重視していたことで知られています。楽天の涌井秀章投手も、ダルビッシュとは対極に近いイチロー選手の思考に着目し、「脱ウェート」に舵を切ったことがあります(Number「なぜ楽天・涌井秀章(34)はウエートトレーニングをピタリとやめたのか」)。つまり、トレーニング方法に「絶対解」はなく、選手それぞれの体質や目的に合わせた最適解を見つけることが重要なのです。
高校野球の現場にも変化の兆し
スポルティーバの記事によれば、ある高校野球の指導者が選手たちに「軽いランニングをしよう」と提案したところ、選手側から「なぜランニングをやるんだ?身体に疲労が溜まるから、いいパフォーマンスを発揮できなくなる」という反発があったといいます。選手たちは「それなら、スキップ動作やチューブトレーニングでも血流がよくなって身体が温まるし、長い距離を走る必要がないよね」と主張。指導者は「それまでの常識が覆り、目から鱗が落ちました」とコメントしています(スポルティーバ「ダルビッシュ有の『野球に走り込みは必要ない』理論を徹底解剖」)。この指導者は米国でフィジカルトレーニングを習得した吉原剛氏で、プロのサッカー選手や野球選手、五輪選手たちを指導しており、「まったく効果がないわけではありませんし、競技によっても違います。『身体をリフレッシュさせる』『疲労回復を促進させる』という目的であれば有効ですし、『持久力をつけて心肺機能を大きくする』という効果もありますが、瞬発力が大事な野球では、長距離のランニングは必要ないと私は考えています」と述べています。
結論:「目的を明確にした走り」が重要
ダルビッシュ有選手の「長距離ランニング不要論」をめぐる議論を整理すると、次のような結論が見えてきます。
否定派(ダルビッシュ選手含む)の主張
- 目的が不明確な長時間の走り込みは、野球に必要な速筋繊維の発達を阻害する可能性がある
- 野球は瞬発力が中心のスポーツであり、持久力重視のトレーニングは非効率
- 短距離ダッシュやインターバルトレーニングの方が、野球のパフォーマンス向上に直結する
- ただし、コンディショニング目的の軽いジョギングや短距離走は有効
肯定派(柳田選手、イチロー選手など)の主張
- 走ることは全身運動であり、全身の筋力強化につながる
- 心肺機能、スタミナ、体幹と四肢の連動性が向上する
- 選手としての美しい姿勢や走り方を身につけるために重要
- 目的を明確にし、短距離・中距離・長距離を組み合わせることで効果が最大化する
両者に共通する考え方
実は、否定派も肯定派も「目的を明確にした走りは必要」という点では一致しています。ダルビッシュ選手自身も「目的を立てて距離を変えていくとか、ちゃんと目的があるようなランニングというか、そのコンディショニングに関してはすごく自分も重要視している」と語っており、走ること自体を否定しているわけではありません。Full-Countの記事が指摘するように、「伝統的な”走り込み一辺倒”の練習からは、転換したほうが良いだろう。練習の意図を明確にし、選手の成長段階やポジションの特性に合わせてメニューを最適化することが、パフォーマンス向上と怪我防止の両立につながる」というのが、現代野球における合理的な結論と言えそうです。
まとめ:2026年、変わる野球トレーニングの常識
2026年1月にダルビッシュ有選手が改めて発信した「長距離ランニング不要論」の真意は、「目的が不明確で過剰な走り込みは非効率」というものであり、決して「走るトレーニング全てを否定」しているわけではありません。科学的根拠に基づき、短距離ダッシュやインターバルトレーニングを中心としたメニュー構成を推奨する一方で、柳田選手やイチロー選手のように、走り込みの効果を実感しているトップ選手も多く存在します。重要なのは、「なぜ走るのか」という目的を明確にすること、そして選手の成長段階や体質、ポジションに合わせて最適なトレーニングを選択することです。今回のX上での議論は、野球界全体が「伝統」と「科学」のバランスを取りながら、より効率的なトレーニング方法を模索していることを示しています。指導者も選手も、固定観念にとらわれず、常に「なぜこの練習をするのか」を問い続ける姿勢が求められる時代になっていると言えるでしょう。
関連記事・参考リンク
- 【谷繁×ダルビッシュ有】ランニング不要論をダルビッシュ本人に直撃(YouTube)
- ダルビッシュ有の「野球に走り込みは必要ない」理論をフィジカルコーチが徹底解剖(スポルティーバ)
- 野球界の伝統「走り込み」はなぜ非効率か(Full-Count)
- 【野球の走り専門家が解説】野球の走り込みは無駄?重要性やメリットを紹介(走研究所)
- 柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス)が走り込みを語る(アルペングループ)
※本記事は2026年1月4日時点の情報を基に作成しています。


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