パドレスは、ダルビッシュ有投手が先週水曜日(10月29日)に右肘のUlnar Collateral Ligament (UCL)、すなわち内側側副靭帯の修復手術を受けたと発表しました。報道によれば、2015年に続き自身2度目となる肘の大手術であり、「人工靱帯を用いた手術」であったとのことです。
そして、最も重い事実は、彼が2026年シーズンを全休する見込みであるということです。復帰は2027年シーズン、彼が41歳を迎える年になります。
39歳という年齢でのUCL手術。これは、通常の「トミー・ジョン手術」からの復帰とは、また異なる次元の挑戦を意味します。
しかし、私たちは知っています。ダルビッシュ有という投手が、これまで何度も逆境を跳ね返し、そのたびに進化を遂げてきたことを。
この記事では、まずダルビッシュ投手のこれまでの「怪我との戦いの歴史」と「契約の道のり」を振り返り、復活を遂げたレジェンド投手たちの事例と共に考察していきます。
第1章:二度のメス。ダルビッシュ有、怪我と契約の道のり
ダルビッシュ投手のキャリアは、常に圧倒的な才能と、隣り合わせの「肘」との戦い、そして大型契約という期待の歴史でもありました。
最初の試練:2015年 トミー・ジョン手術 (28歳)
彼がメジャーで最初にして最大の壁にぶつかったのは、テキサス・レンジャーズ在籍時の2015年でした。
- 経緯: 2014年シーズン終盤に右肘の張りで離脱。2015年スプリングトレーニングで再び張りを訴え降板。
- 手術とリハビリ: 2015年3月17日にトミー・ジョン手術を受け、2015年シーズンは全休。約14ヶ月のリハビリを経て、2016年5月にメジャー復帰を果たします。
この最初の手術は、彼に「投手・ダルビッシュ有」としての新たな視点を与えました。手術を「後退」ではなく「進化の機会」に変えたのです。
カブスとの大型契約とパドレスへの移籍
最初のトミー・ジョン手術からの完全復活を果たした後の2018年オフ、ダルビッシュ投手はFA市場の目玉となり、シカゴ・カブスと大型契約を結びます。
- カブスとの契約: 2018年、カブスと6年総額1億2600万ドル(約165億円)の契約で合意しました。当時31歳。
- カブス時代: 移籍1年目の2018年は肘や腕の故障に苦しみますが、2019年に完全復活。短縮シーズンの2020年には8勝を挙げ、サイ・ヤング賞投票で2位に入る圧巻の投球を披露しました。
- パドレスへの移籍: 2020年オフ、カブスの財政事情もあり、契約期間を2年残した状態でサンディエゴ・パドレスへトレードで移籍しました。
現在の契約:42歳まで現役保証の異例の長期契約
パドレスのエースとして活躍を続けたダルビッシュ投手は、2023年開幕前に球団から絶大な信頼を得て、異例の長期契約を結び直しました。
| 契約内容 | 期間 | 総額 | 契約終了時年齢 |
|---|---|---|---|
| パドレスとの契約延長 | 6年間 | 1億800万ドル(約142億円) | 42歳(2028年) |
今回の手術発表時点(2025年11月)で、この6年契約のうち、**2026年、2027年、2028年の3年間**が残っています。
しかし、今回のUCL修復手術により、彼は2026年シーズンを全休します。復帰を目指す2027年シーズンは、契約の5年目にあたります。41歳で、再びメジャーのマウンドに立つための、長く、険しいリハビリが始まります。
二度目の試練:2025年 UCL修復手術 (39歳)
2025年10月29日。39歳にして再び肘にメスを入れることになりました。報道では「人工靱帯を用いた手術」とあり、球団は復帰時期を「2027年シーズン」と発表。42歳まで保証された契約の終盤に向けて、彼はそのキャリアのすべてを懸けることになります。
第2章:30代後半の”壁”を超えて。復活を遂げた投手たち
ダルビッシュ投手が目指す道のりは、険しいものです。しかし、年齢と手術という「常識」を覆し、同様の困難を乗り越えた偉大な先人たちが存在します。
奇跡の代名詞:ジャスティン・バーランダー (37歳で手術 → 39歳でCY賞)
- 手術: 2020年10月、トミー・ジョン手術。当時37歳。2021年シーズンを全休。
- 復活 (2022年 / 39歳): 39歳で迎えた2022年シーズンに完全復活。18勝4敗、防御率1.75を記録し、満票で自身3度目となるサイ・ヤング賞を受賞。
バーランダーが39歳で見せた奇跡は、ダルビッシュ投手にとって「不可能ではない」という何よりの証拠です。
2度のTJから蘇った”最強”:ジェイコブ・デグロム (34歳で2度目の手術)
- 手術: 2023年6月、自身2度目となるトミー・ジョン手術。当時34歳。
- 復活 (2025年 / 37歳): 2024年シーズン終盤に復帰し、2025年シーズン(37歳)にはエースとして完全復活を遂げています。
2度目の手術であっても、適切なリハビリと本人の類稀なる才能があれば、トップフォームを取り戻せることをデグロムは示しています。
役割を変えて掴んだ栄光:ジョン・スモルツ (33歳で手術 → 39歳で最多勝)
- 手術: 2000年にトミー・ジョン手術。当時33歳。
- リリーフでの大成: 2001年(34歳)からクローザーへ転向し、2002年(35歳)には55セーブを記録。
- 先発への再転向と”復活”: 2005年(38歳)から再び先発に復帰し、2006年(39歳)のシーズンに16勝を挙げ、最多勝のタイトルを獲得。
39歳にして再び先発投手として頂点に立ったスモルツの姿は、41歳での復帰を目指すダルビッシュ投手にとって、キャリアの柔軟性という点でも大きなヒントとなります。
結論:2027年、”進化”したダルビッシュ有を待つ
ダルビッシュ有投手の39歳でのUCL手術、そして2026年シーズンの全休という現実は、あまりにも重く、過酷です。
しかし、彼は常識に囚われず、変化を恐れません。誰よりも野球を愛し、誰よりも貪欲に新しい知識を吸収し続ける探求者です。
この大きな試練さえも糧にし、また一つ「進化」を遂げた、41歳の新しいダルビッシュ有が、2027年、契約の5年目にマウンドに立つのを信じて待ちましょう。
頑張れ、ダルビッシュ投手。あなたの復活の物語は、まだ終わっていません。

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