先日、東京・天王洲の寺田倉庫で開催中の「ジブリの立体造型物展」に足を運んできました。入場前から胸が高鳴っていた私ですが、実際に会場に足を踏み入れた瞬間、まさに息を呑むような感動が待っていました。22年ぶりの東京開催ということで、これまで温めてきた技術と愛情がぎゅっと詰まった、まさに進化を遂げた展覧会です。
圧倒的な迫力で迎えてくれる『紅の豚』の世界
会場に入ってすぐに目に飛び込んできたのは、『紅の豚』に登場する飛行艇サボイアS-21の巨大な立体造型物でした。特撮界のエキスパートである伊原弘さんが「もしも本当にあったら」という想定で制作されたこの飛行艇は、もう本当に今にも空を飛び立ちそうな迫力で。細部まで丁寧に作り込まれたプロペラや機体の質感、そして何より寺田倉庫の運河沿いという立地が、まさに映画に出てくるピッコロ社のような雰囲気を醸し出していて、ポルコの世界に迷い込んだような錯覚を覚えました。
展示を眺めながら、思わず「フィオ、君の設計は完璧だったよ」なんてポルコの台詞が頭に浮かんでしまいます。この飛行艇の前で写真を撮る来場者の皆さんの笑顔も印象的で、老若男女問わず、みんなが子どもの頃に戻ったような無邪気な表情を浮かべているのが素敵でした。
トトロと出会える森の中へ
『となりのトトロ』のエリアでは、美術監督・男鹿和雄さんの手がける背景画の世界観を立体で再現した空間が広がっていました。1950年代の東京郊外の自然豊かな風景が、まるで映画から飛び出してきたかのように目の前に現れ、あのノスタルジックで温かい気持ちがじわじわと胸に広がります。
特に印象深かったのは、サツキとメイが初めてトトロに出会う巨大なクスノキの根元を再現した展示です。薄暗い森の中で、本当にトトロが現れそうな神秘的な雰囲気に包まれていて、私も思わず「トトロ〜」と心の中で呼びかけてしまいました。隣にいた小さな女の子が「トトロいる?」とお母さんに聞いている声が聞こえて、微笑ましくなりました。
世界に広がるジブリの輪-海を渡った熱風
今回の展覧会で特に興味深かったのは、「海を渡った熱風」というテーマで紹介されているスタジオジブリ作品の海外展開についての展示でした。80を超える国や地域で公開された『君たちはどう生きるか』をはじめ、ジブリ作品が世界中で愛されるまでの道のりが、各国のパートナーたちの努力とともに紹介されています。
北米、欧州、アジアなど各地でどのように作品が届けられていったのかを辿る展示は、まさに「仕組み」ではなく「人」の想いが作り上げた奇跡の物語でした。フランスでの初上映時のポスターや、アメリカでの宣伝資料など、貴重な資料の数々を見ていると、言葉や文化の壁を越えて愛される作品の普遍性を改めて感じずにはいられませんでした。
宮﨑駿監督の幻の短編に出会う感動
会場内では、宮﨑駿監督が2002年に三鷹の森ジブリ美術館のために制作した短編アニメーション映画『空想の空とぶ機械達』の特別上映も行われています。上映時間はわずか6分間ですが、19世紀の人々が思い描いた未来の「空とぶ機械達」を描いたこの作品は、宮﨑監督の空への憧れと想像力が凝縮された珠玉の作品でした。
久石譲さんの音楽と宮﨑監督自身のナレーションが織りなす世界観は、短い時間ながらも深い余韻を残してくれます。上映後、隣に座っていた年配の男性が「やっぱり宮﨑さんの作品はいいなあ」とつぶやいているのを聞いて、世代を超えて愛される作品の力を実感しました。
五感で楽しむジブリの世界
展示を見て回りながら感じたのは、立体造型物だからこそ味わえる「体験」の豊かさです。『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』など、数々の名場面が立体で表現されることで、映画を見ているだけでは気づかなかった細かなディテールや、空間の広がりを感じることができました。
特に『千と千尋の神隠し』の油屋の内部を再現した展示では、千尋になった気分で不思議な世界を探検しているような感覚を味わえました。湯婆婆の部屋の重厚な雰囲気や、カオナシが佇む薄暗い廊下の空気感まで、まるでその場にいるかのようなリアリティがありました。
スタンプラリーで東京散策も楽しむ
展覧会とタイアップして、東京メトロでは「ジブリの立体造型物展×東京メトロ スタンプラリー」も開催されています。中野坂上駅、葛西駅、湯島駅、有楽町駅の4駅を巡ってスタンプを集めると、先着7,000名に展覧会オリジナルステッカーがもらえるという素敵な企画です。
私も早速参加してみたのですが、各駅でジブリのキャラクターと出会える楽しさと、普段は素通りしてしまう駅をじっくりと見て回る新鮮さがありました。スタンプラリーは6月1日まで実施されているので、展覧会と合わせて東京散策を楽しむのもおすすめです。
あのハム入りラーメンが復活!
そして、忘れてはいけないのが会場隣接の水上施設「T-LOTUS M」で味わえる「あのハム入りラーメン」です。2年前の「金曜ロードショーとジブリ展」で話題になったこの特製ラーメンが、特典付きチケット購入者限定で楽しめるんです。
実際に味わってみましたが、映画の中で美味しそうに描かれていたあのラーメンが現実になった感動は格別でした。シンプルながらも心温まる優しい味で、展覧会の余韻に浸りながらいただく一杯は最高でした。
展覧会詳細情報
開催概要
- 展覧会名: ジブリの立体造型物展
- 会期: 2025年5月27日(火)〜9月23日(火・祝)
- 開館時間: 9:30〜20:00(最終入場19:00)
- 入場料: 大人1,900円、中・高校生1,600円、小学生1,200円(日時指定予約制)
- 特典付きチケット: 大人2,900円、中・高校生2,600円、小学生2,200円(ハム入りラーメン付き)
アクセス
- 会場: 東京・天王洲 寺田倉庫 B&C HALL/E HALL
- 住所: 〒140-0002 東京都品川区東品川2-1-3
- りんかい線 天王洲アイル駅B出口より徒歩4分
- 東京モノレール羽田空港線 天王洲アイル駅中央口より徒歩5分
- JR品川駅港南口より都営バス(大田市場行き、品98)「新東海橋」下車徒歩3分
お問い合わせ
- ハローダイヤル: 050-5541-8600(全日9:00〜20:00)
この展覧会は東京展のみで巡回はありません。9月23日までの限定開催なので、ジブリファンの方はもちろん、美しいものや心温まる体験がお好きな方には、ぜひ足を運んでいただきたい特別な展覧会です。きっと、童心に帰って純粋な喜びを感じられる、かけがえのない時間を過ごせることでしょう。
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